幹細胞とは?
私たちの人間の体にはおよそ37~60兆個の細胞があり、その種類は270種にもなるといわれています。細胞は日々新しく生まれ、死んでしまった細胞と入れ替わる「代謝」をしており、体全体の健康を維持しています。
新しく生まれた細胞は分裂して数を増やすだけではなく、それぞれが機能を持つように変化しなければなりません。これを「分化」といいます。分化によってさまざまな種類の細胞が作られ、それぞれが大切な役割を果たしています。
このさまざまな種類に分化する能力を持った細胞を「幹細胞」と呼びます。
幹細胞にはもともと私たちの体にある「間葉系幹細胞」「造血幹細胞」のほかにも、人工的に作られた「ES細胞」、「iPS細胞」などがあります。
幹細胞はどこにある?
幹細胞の採取は20年ほど前までは骨髄に針を刺して採取していました。しかし、脂肪組織の中にも幹細胞がたくさんあることが発見され、最近ではより安全に、大量に採取できる脂肪組織を利用するケースが増えています。採取は脂肪が多い「おなか」、「おしり」、「ふともも」などの皮下脂肪から行います。
幹細胞のはたらき
幹細胞にはもともと傷ついたり数が減った細胞の代わりとなり、体の機能を補ったり修復を働きかける能力があります。普段は活動していませんが、周囲の細胞から危険を知らせるシグナルを感じると細胞分裂を開始し、分化して弱った細胞の近くに集まり体の機能を維持しようとします。このホーミング効果により、損傷した組織や臓器を修復して元に戻そうとする力を利用したのが幹細胞を使った再生医療です。
また、幹細胞からは周囲の細胞を増やしたり、活動性を向上させる物質(サイトカイン・成長因子・伝達物質)が多く出ていると言われています。
この周辺の細胞に働きかけて修復を促進することをパラクライン効果と呼びます。
さらに周囲だけではなく遠方の細胞にも伝達物質を通じて作用している可能性もあり(エンドクライン効果)、3つの効果が脂肪由来幹細胞(ASC)治療に期待されてます。
幹細胞治療ができる施設
脂肪由来幹細胞(ASC)治療はどの施設でも簡単にできる治療ではありません。この治療は再生医療等の安全性の確保等に関する法律のもと行われる再生医療であり、厚生労働省が認めた特定認定再生医療等委員会で治療の妥当性・安全性などが厳しく審査されます。再生医療を行う細胞の提供計画書が厚生労働省に受理され初めて治療を行うことができます。当院は第二種再生医療の提供計画が受理され、提供計画番号を取得しています。また、細胞を培養する施設も厚生労働省の認可を受けた細胞培養加工施設(CPC)に依頼しています。
幹細胞治療の実施状況
現在、第二種再生医療は多くの診療科で行われています。
美容を除くと整形外科領域で非常に多くの治療実績があります。特に変形性膝関節症で症状の改善と進行の抑制が得られたとの報告があります。
診療科ごとの治療疾患
- 整形外科:変形性関節症(膝含む)、靱帯・筋・腱の障害、骨粗鬆症、がんによる骨の痛み
- 形成外科・美容:乳房再建、豊胸、顔面萎縮症、皮膚陥凹性変形、慢性疼痛、アンチエイジング
- 皮膚科:アトピー性皮膚炎、強皮症
- 内分泌・代謝内科:糖尿病、動脈硬化
- 脳神経外科:脊椎損傷、脳梗塞
- 脳神経内科:パーキンソン病、認知症
- 膠原病内科:関節リウマチ、自己免疫疾患
- 血管外科:重症下肢虚血、バージャー病
- その他
変形性膝関節症でASC治療をおすすめできる患者様
まずは通常の治療を続けていただきますが、以下の方が良い対象と考えられます。
- 今までの治療では効果が長続きしない
- 症状の進行を予防して重症化をさけたい
- 人工関節などの手術を勧められたができればしたくない
- 今は長期間の入院ができない
- 痛み止めの薬やサプリメントを減らしたい、やめたい
- 家族に介護の負担をかけたくない
- 骨壊死の診断をうけた
- 最新の細胞再生医療をうけたい
ASC治療で期待される効果
1.痛みの緩和
幹細胞が炎症を抑えるサイトカインなどを分泌して痛みが改善する。
他の治療と比べて早く痛みが軽減し、組織や臓器の修復を働きかけ長期間維持できたという報告が学会での発表や医学専門誌で多数あります。
2.軟骨の再生
本来再生しないといわれている軟骨が増殖、修復する。
幹細胞自体が持つ分化能や修復を促進する効果で、障害を受けた軟骨の保護や維持に加えて、白い強固な軟骨(硝子軟骨)ができたとの報告があります。
3.運動機能の回復
膝の痛みの緩和と軟骨の再生によって膝関節の可動域や運動機能が改善する。
痛みの緩和と同様に一時的ではなく、長期間維持できたといわれています。
脂肪由来幹細胞治療のメリット
- 最新の再生医療で今までの治療に満足できなかった方に改善効果が期待できる
- 人工関節などの手術が回避、もしくは延期できる可能性がある
- ご自身の体から採取した細胞を使うので安全性が高い
- 入院の必要がなく採取と投与の2回の外来受診で治療できる
脂肪由来幹細胞治療のデメリット
- 治療効果が患者様によって個人差がある
- 施術や投与の際に感染や炎症などの副作用が起こる可能性がある
- 厚生労働省に提供計画が受理された治療ですが、まだ解明されていないメカニズムやリスクがある
- 自由診療で費用が自己負担となる
治療の流れ
診察
ASC治療を希望される患者様は、問診や触診などの患部の診察を行い、必要が有れば画像診断のうえで治療の適応があるかどうかの診断を行います。すでに他の医療機関で診察や画像検査などを受けている場合は、その画像(レントゲン、MRI)のデータをご用意ください。
治療同意
治療に適応があり医師の説明に同意されたら、治療と採血のスケジュールを決定します。
採血は採取予定日の3か月~2週間前に行いますが、すでにこの期間で実施済みでしたら行いません。
※必要な検査項目を満たしているか医師に確認してください。
脂肪採取
患者様が希望された脂肪採取日に来院していただきます。
局所麻酔で皮膚を1cmほど切開し皮下脂肪を採取します。採取自体は短時間で終了し、入院の必要はなく日帰りで行えます。
細胞培養
委託先の細胞培養加工施設に採取した脂肪を送り約6週間培養を行います。
輸送中の脂肪は専用ボックスを使用し温度管理をします。また培養期間中も状況のモニタリングや、感染の検査などを行い厳重に管理されます。
凍結保存
治療プランの細胞数まで培養が終わるといったん-150℃の超低温で凍結保存します。
凍結保存期間は2年間です。投与日に合わせて解凍し専用ボックスで輸送します。
投与
ご希望の投与日に来院していただきます。施術は通常の関節注射と同じです。
一度解凍された細胞は保存ができないため、予定日に来られない場合は細胞を破棄することになります。
確実に来院できる日を選んでください。
※投与後に一時的に痛みが出る場合もありますので、医師の指示に従ってください。
経過観察
投与後、1か月後、3か月後、6か月後を目安に痛みの評価や、画像の評価を行い治療の経過をフォローアップします。
よくある質問
- 治療効果を感じるまでどのくらいの時間がかかりますか?
- 幹細胞治療の効果は個人差がありますが、1か月ほどを目安にしてください。
- 治療は安全ですか?
- 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づいて、厚生労働省に治療計画が受理されています。
年間数千件の治療が行われていますが、重篤な副作用の報告はありません。 - 治療の痛みはどの程度ですか?
- 脂肪採取は局所麻酔で行えますので通常の歯医者さんなどで受ける注射の程度だとお考えください。
投与の注射も通常の関節内注射と同じ程度だとお考えください。 - 脂肪はどこからとりますか?
- 皮下脂肪の多いところであればどこでも採取可能です。感染や術後のケアを考えておなかからの採取を勧めています。(患者様の状況によりおしりやふとももから採取することもあります)
- 入院は必要ですか?
- いいえ。不要です。
基本的に外来での対応となります。診察後に脂肪採取と投与の2回ご来院いただきます。 - 投与予定日に行けなかった場合、細胞はどうなりますか?
- 解凍してしまうと廃棄になります。
急遽来院が不可能になった場合はすぐにご連絡ください。 - 凍結した細胞はどのくらい保存できますか?
- 今のところ2年間です。
期間内であればご希望のタイミングで投与できます。保存期間は今後検証が進むと延長する可能性があります。 - 脂肪由来幹細胞治療には保険は適用されますか?
- 自由診療になりますので全額患者様のご負担となります。
- 電話番号
- 03-3816-2002
- FAX
- 03-3816-2004
- 所在地
- 〒112-0002
東京都文京区小石川1丁目5番1号
パークコート文京小石川 ザ タワー3階 - 診療内容
- 整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科
- 院長
- 丸山 剛
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